ご報告

2022年度 経団連自然保護基金 プロジェクト

UNIMAS大学と共同での動植物の生態調査をもとに

「コミュニティ・フォレストのエコ・ツーリズム開発」

Develop Eco-Tourism at Sabal area and its surrounding

through ecological survey of flora & fauna with UNIMAS and the native.

 

サバル近辺の森林のカメラトラップのデータ確認と聞込み調査(2023213日~15日)

 

1月のデータ確認に引き続き、データ確認とカメラの調整の作業に、サバル地区へ調査に行きました。今回は、クリンカン山脈麓の方を集中的に行いました。

  

カメラのデータ回収と、動作確認も行います。新しいSDカードと交換したり、電池の交換などの通常の作業を行います。

  

2日目は、丸1日ありますので、一番奥の場所のカメラトラップに行きます。ここが一番、動物の画像が確認できています。やはり、インドネシアとの国境を跨ぎ、広い原生林が残る森林ですので、可能性も広がります。Nyalitakの山は、パッチ状の一部のために、やはり動物相が限定的ですが、あきらめてはいません。ボルネオクジャクの珍獣の存在は、沢山の村人より聞いており、そのオスがメスを呼び込む鳴き声は、最近も聞かれているとの事。

  

先住民族が発見した足跡をもとに、カメラトラップを再設置しています。

  

このようなスペースが、当然、村人が開拓した形跡もなく、自然と空間が出来た部分は、動物の通り道の可能性があります。こちらは、データで動物確認されていた場所なものの、画面の下の方をかすめて、分かりにくかったものを、その角度を下目に調整している様子です。

  

村人の出作り小屋の床を拝借して、データのコピーです。何が映っているか楽しみです。カメラのいくつかは継続して、今年の年度以降も設置しておく予定で、これから、面白いものを捉えるのを期待しています。

  

   

カメラトラップが捕らえた映像

真新しい動物は無かったですが、下記ご紹介いたします。

コシアカキジも別のカメラで捉えていましたし、今回は、アカハラシキチョウも捉えてました。鹿の角だけのものもあり、カメラの角度は難しいですね。

同じカメラで、イノシシの群れが過ぎ去った同じ場所も、鹿の仲間が通っており、ここは、中型の動物の通り道になっているようです。

インドキョンのメスとオス。角のある方がオスです。カメラとにらめっこしている個体もいました。

こちらは、夜の部ですが、白いネズミの種類のジムヌラと思われますが(強烈なアンモニア臭がする)、要確認です。背中の白い線があるスカンクアナグマは、動画も画像も大量にとらえられていて、かなり長い時間撮影されてましたが、土の中を掘り起こして、餌を探している模様。途中から、同種の別の個体が来てたものの、一生懸命、土を掘り起こしていました。イノシシは、活発です。同様に土の中の食べ物を探している模様。

 

ブタオザルも、かなり、カメラを意識しだしている個体もあり、センサー稼働時に光が出るので、驚いたのかもしれません。

 

 

UNIMAS大学の学術チームからの報告書の翻訳抜粋

 

フィールドトリップの主な目的は、サバルのケリンガン山脈に野生動物観察のために設置されたカメラトラップをモニターすることである。さらに、さまざまな動物種の行動、生息地の好み、生態学的重要性についての洞察を得るために利用できるあらゆる信号を調査・監視し、特にケリンカン山脈地域の動物個体群の経年変化を追跡することも目的としています。近隣の村の先住民族がフィールドワークを先導してくれました。このフィールドワークで得られた知見は、トレッキング活動中のフィールドで、相当数の動物の渡り廊下、足跡、移動、その他のサインが明確に観察されたことから、本研究の目的にとって重要なものでした。

GPSを使用して、設置したすべてのカメラトラップの位置を確認した。カメラからSDカードを取り出し、ノートPCにデータを移送し、その後、各カメラのSDカードを新しい空のカードと交換したり、カメラトラップの電池を交換したり、カメラをフォーマットしてから再インストールした。また、一部のカメラは、倒木などによる茂みに隠れていたため、視認性を高めるために座標や角度を変更した。

映像の解析によると、強風や大雨のため、葉や枝を写したカメラもあった。野生動物の大きな存在感を捉えたカメラは少なかった。さらに、とらえどころのない種や夜行性の種、直接観察することが難しい野生動物の行動を知ることができるカメラトラップの優位性の出た動物の姿を捉える事が出来たものの、残念ながら、撮影された画像の中には、交尾行動や子育て、捕食者と被食者の相互作用など、動物行動学の研究に利用できるものはほとんどありませんでした

下記に、設置したカメラトラップを使って撮影した野生動物(哺乳類)の一覧を紹介します。


サバル
地区の森林に生息することが確認されている動物相(哺乳類)の予備リスト-

Family                 Species                             Common name                   Local name


Cercopithecidae       Macaca nemestrina             Pig-tailed Macaque               Beruk

Cervidae                 Muntiacus muntjak             Indian Muntjak                    Rusa
Sciuridae                Callosciurus prevostii          Prevost’s Squirrel                 Engkerabak
Suidae                   Sus barbatus                     Bornean Bearded Pig            Babi Hutan
Tarsiidae                Cephalophacus bancanus    Western Tarsier                   Kera hantu
Tragulus                Tragulus kanchil                 Lesser Mousedeer                Kancil
Tragulus                Tragulus napu                    Greater Mousedeer              Napuh
Phasianidae            Lophura ignita                    Bornean Crested Fireback    Ayam Pegar

Mustelids               Mydaus javanensis              Malay Badger                      Luak

 

コシアカキジは中型の鳥で、オスは長く尖った尾を含めて全長65cm、メスは50cmに達することがあります。オスは光沢のある濃い青黒い体に、鮮やかな赤色の頭部と紋章を持つ印象的な羽毛を持つ。雌はより落ち着いた色合いで、体は茶色がかった黒、頭と紋はバフ色をしています。どちらも

オスとメスは、足腰が青く、目の周りにむき出しの赤い斑点があります。コシアカキジは主に地上生活型の鳥で、密林や林縁に生息している。雑食性で、さまざまな植物や昆虫、小動物を捕食する。繁殖期には、雄は発声、羽ばたき、鮮やかな羽毛の展示など、精巧な求愛行動を行う。森林伐採や狩猟による生息地の減少により、国際自然保護連合(IUCN)により準絶滅危惧種に指定されています。サラワク州では、サラワク州野生生物保護条例により保護されており、狩猟は禁止されています。

 

Tragulus kanchilは、和名でヒメマメジカと呼ばれ、マメジカの2種の中では小型で、体長は最大40cm、体重は1kg程度です。暗褐色から赤褐色の被毛に、特徴的な白い下腹部と喉の白斑があります。Tragulus napuは、和名でオオマメジカと呼ばれ、体長は60cm、体重は5kg程度と大型です。毛色は黒っぽい赤褐色で、特徴的な白い下腹部や喉の斑点はありません。

 

Muntiacus muntjakは、和名でインドキョンと呼ばれる。

 

アカハラシキチョウが、右端中央の枝にとまっている。

 

ヒゲイノシシの群れ。この通りは、シカの仲間も通って行った画像を捉えていたので、いわば、野生動物の街道と思われる。

 

 Mydaus javanensisは、和名でスカンクアナグマと呼ばれ、頭より尻尾にかけての白の線が特徴、スカンクの名の通り、肛門腺から分泌される強烈なにおいがあり、数メートル先でも強い臭いを感じる事が出来る。主に、地上生だが、夜行性なので、昼間見かける事は困難である。昼間は、地面の穴で休んでいる。柔らかい土の中に住む、ミミズや、昆虫の幼虫などを好んで食べる。この場所で、長時間の菜食活動を行っているのが記録されていたが、ほとんどが、1匹だけ映像にあるのものの、ある日の記録だけは、2匹が同じ場所で菜食していたのが記録されていた。

 

村人への聞き取り調査

村人の既知の野生動物がほとんどの結果になったものの、やはり、カメラトップの設置範囲に限界があるため、村人への聞き取り調査が非常に重要になってくるが、樹上性の動物は、この聞き取り調査が重要な位置を占めてくるが、今回の聞き取り調査では、クリンカン山脈の中腹で、イノシシ狩りなどを良くする村人に確認をすると、目視や、その鳴き声などから、テナガザルや、サイチョウ、カニクイザル、リーフモンキー系、ヤマアラシ、ウンピョウ等のヤマネコ数種、スローロリス、ゴシキチョウ、クリームオオリスを始めとする、リス類や、ムササビ、ヒヨケザル、さらには、山頂付近には、オランウータンを見たことあるとの情報もあるが、その目撃の頻度や、その場所の距離などを考慮しなければならないため、引き続き、聞込みや、翌年以降の植物調査の際に並行して、調査を続ける必要があると思われる。

ツーリズムの素材としての動物は、100%である必要はないものの、バコ国立公園のように、1時間程度森を歩けば、テングザルやカニクイザル、シルバーリーフモンキー等が、ほぼ確実に、60%以上の確率で見れるため、世界からの観光客を集めるが、クチンから片道1時間ほどでたどり着けるバコ国立公園に比べ、このサバル地域は、片道2時間弱掛かるため、それ相応の動物がある事で、初めて優位性を持つことが出来るので、野生動物で可能性が低いのならば、植物や景観など、ここまで来ないと見れないという自然の要素を探し出さなければならないと思われる。 

 

~~以上、報告書からの抜粋 

動物の調査のカメラトラップの確認作業は、年度末の3月までは、後1回を予定していますが、今の所、既に村人が知っている動物しか映像に捉えられていませんが、来年度は、植物調査や景観探しの年となりますが、並行して、動物調査も続けざるを得ないかもしれません。

 

ただ、動物や昆虫が、春のように動き出す、完全に雨期が明けきる3月上旬に、最後の確認作業に期待します。

 

 

2022年 経団連自然環保護基金 「コミュニティ・フォレストのエコ・ツーリズム開発」 カメラトラップの設置場所調査と聞込み調査

期間:2023213日215

場所:SABAL村/NYALITAK村

責任者: Dr. Qammil 

UNIMAS大学:

1. Mr. Mohammad Aizuddin 2. Ms. Khairunnisha  3. Ms. Esther Erinna  4. Glathycthcia Adriana  5. Ms.  Nur Sabrina

サバル地区:

Mr. Ragai  / Mr.Minjat / Mr. Lanyau / Mr. Ragai (Sabal村)  / Mr. Bill / Mr. Robin   (Nyalitak村)他

NPO担当:鍋嶋 / Alex Then

 

 

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